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時折頬を撫でる指先。
喉を反らすと求める分だけ与えられるけれど。
「アア……」
それでいて自分からは決して近づいては来ない。
触れるだけのキスは僕を焦らし
脳味噌までドロドロに溶かしかねなかった。
しかし
舌先を伸ばしかけたところで
「お腹すかないの?」
わざと現実に引き戻すように
テヨンは気の抜けた声で笑った。
「お店はすぐそこだよ」
「え……あ……」
放心状態の僕の手を引き意地悪く笑うと
テヨンは再び歩き出す。
でも
「ノム キヨッタ」
なんのつもりか。
僕の聞き間違いでなければ
韓国語でポツリ『可愛い』と呟いた。
僕は分からないフリをした。
さすがにこれ以上
緩んだ顔を見られたくはなかったからだ。
だけど――。
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