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別に独り身なのが悪いわけでも、特別寂しい訳でもないのだが。それでもあの中にいるのはちょっと、冷静な自分が待ったをかける。
ファウストは笑い、頷いた。
「それなら、少し付き合うか? 新年に妹から酒が届いたんだが、一人では飲みきれない」
思わぬお誘いに、ランバートは目を丸くする。そして、やんわりと笑った。
いったん戻って私服に着替え、ランバートは手に一つの包みを持つ。そしてそのまま、ファウストの部屋へ上がっていった。
部屋は相変わらず必要なものだけがある。これといった装飾もなく、趣味の物もない。
だがローテーブルの上に数本のワインやシャンパン、摘まめる程度の軽食がある。今日の食堂の残りだ。
「早かったな」
私服に着替えたファウストが迎えてくれて、それぞれ好きに座る。グラスを持つとすぐにシャンパンが注がれた。
「俺も注ぎますよ」
受け取って、同じようにファウストのグラスに酒を注いでいく。淡い色の液体の中を小さな気泡が立ち上るのを見ながら、互いに乾杯を言って一口。甘みと酸味が程よい、上品なものだった。
「美味しいですね」
「妹は毎年何かしら送ってくるんだが、量が多くてな。俺だけでは消費しきれないんだ」
「それで、いつもはどうしているのです?」
「日をかけて消費するか、あいつらを誘う。だが、今日はな」
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