親愛なる人へ

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 中身はマフラーだ。黒ではなく、グレーにした。デザインも父と同じにはせず、彼に似合うように考えた。多分、一番こだわっただろう。 「入団してからずっと、ファウスト様にはお世話になっています。だからこれは、感謝と親愛を込めて」 「手間だっただろ」  手に取って触れる柔らかな手つきが嬉しい。大事にしてもらえそうなのも嬉しい。ランバートの顔にも自然と笑みが浮かんだ。 「それほど手間ではありませんし、材料費もタダです。時間もありましたから」  ラウルに言われて、ほんの少し考えた。幸い毛糸は余る予定だし、順調にいけば時間もある。だが意外とデザインに凝った為、最後は突貫になった。  ふと、ファウストの手が頬に触れ、目の下に触れる。驚いていると、困ったような笑みが覗き込んでいた。 「くまができてるぞ」 「これからは、ゆっくり寝ます」 「無理をして」 「楽しみましたから、苦痛ではありません」  気遣わしい顔が、それでも嬉しそうにしているのを見ている。ふわりと取って巻いた姿は、やっぱり様になった。 「温かい。これなら外回りも辛くないな」 「寒いですからね」 「特に今日は冷える」 「先ほど雪が降り始めましたよ」  窓の外は今雪が降っている。うっすらと積もっていたその上に、新しい雪が重なっていく。 「だが、これを貰っていいのか? 俺は用意していないが」     
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