404人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
中身はマフラーだ。黒ではなく、グレーにした。デザインも父と同じにはせず、彼に似合うように考えた。多分、一番こだわっただろう。
「入団してからずっと、ファウスト様にはお世話になっています。だからこれは、感謝と親愛を込めて」
「手間だっただろ」
手に取って触れる柔らかな手つきが嬉しい。大事にしてもらえそうなのも嬉しい。ランバートの顔にも自然と笑みが浮かんだ。
「それほど手間ではありませんし、材料費もタダです。時間もありましたから」
ラウルに言われて、ほんの少し考えた。幸い毛糸は余る予定だし、順調にいけば時間もある。だが意外とデザインに凝った為、最後は突貫になった。
ふと、ファウストの手が頬に触れ、目の下に触れる。驚いていると、困ったような笑みが覗き込んでいた。
「くまができてるぞ」
「これからは、ゆっくり寝ます」
「無理をして」
「楽しみましたから、苦痛ではありません」
気遣わしい顔が、それでも嬉しそうにしているのを見ている。ふわりと取って巻いた姿は、やっぱり様になった。
「温かい。これなら外回りも辛くないな」
「寒いですからね」
「特に今日は冷える」
「先ほど雪が降り始めましたよ」
窓の外は今雪が降っている。うっすらと積もっていたその上に、新しい雪が重なっていく。
「だが、これを貰っていいのか? 俺は用意していないが」
最初のコメントを投稿しよう!