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親愛なる人へ
宿舎で夕食を食べたが、今日は閑散としていた。
相手のいる者は大概外に出ているし、仕事のある者も姿を見せない。いつもは騒がしい食堂が、今日はまばらに見えた。
「こういう光景も、珍しいものだな」
いつものように対面に座ったファウストが、辺りを見回しながらそんな事を言う。それにつられるように、ランバートも周囲を見る。
今日はラウルもシウスも、オスカルもいない。皆恋人と幸せな時間を過ごしているだろう。
「独り者って感じがしますね」
「そうだな」
静かに言うファウストはこれといって関心もないのか、静かに食事を始める。ランバートも静かな食事を開始した。
「そういえば、恋人のいない奴らを集めてラウンジで飲むと、グリフィス様が言っていましたが、行きますか?」
食堂に来る少し前に、大声で人を集めるグリフィスに出会った。それに賛同する男どもの、いっそ清々しい活気ある声が響いているのを聞いて、どうにもやるせない気持ちになってしまった。
ファウストは苦笑して首を横に振る。まぁ、これも予想はできたが。
「行きたいなら行ってこい」
「いえ、遠慮します。なんか、余計に寂しいので」
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