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エリィが言うように、看板には瓶屋、蓋屋、樽屋、豆茶粉砕器具屋、豆茶抽出器具屋などと書かれてある。
「豆茶を粉砕するとはどういうことだ?」
トールが言い、ジエナが笑って、なかに入ってみるかいと扉を開いた。
なかには豆茶独特の香りが漂い、どうやら客の多くは飲んでいるのだった。
「ここは喫茶店ではないのか」
思わずトールが言うと、店員が笑って、喫茶店じゃありませんよと言った。
「豆茶の挽き方を教えているんです。お客さんもどうぞ」
そう言って店内の中央にある台へと促した。
「粉砕機の使い方が判らないって言うんで、豆茶1杯分の料金で教えて、飲んでもらってるんですよ。お客さん方、豆茶は飲めますかね」
店員に応えて、トールが真っ先に言った。
「もちろん飲める」
「わたくしも」
「ザイとカヌラは白乳がないと」
口々に言うので、ジエナがまとめて言った。
「何人までならできる?」
「ええと、一度に6人ですね」
「なら、6人分頼む。ヤナ、ポーラ、お前たちもしてみろ」
そういうことで6人決まり、それぞれ形の違う器具を渡され、ゆっくりと豆を挽いた。
挽き終わると、それぞれ布を固定された抽出器に、砕いた豆を入れて、口の細い湯入れから、ゆっくりと湯を回し入れていく。
抽出が終わって、さあ、飲んでくださいと言われると、トールはまず詰めていた息を吐いた。
「時間がかかるものなのだな!」
「ええ、まあ、そうですよ」
店員が笑って答える。
「あらかじめ作っといて、温めておくこともできますが、それだとこの香りはない」
「確かに、香りが強いですわね…!」
エリィが言って、一同が頷く。
「自分で淹れたからかうまく感じる。それで粉砕機を買っていくのだな」
コリンが言うと、店員は頷いた。
「ええ。1日の終わりに、店ではなく自宅で一杯飲みたい、という客が多かったんで、小さいのを作ったら、どこから話を聞いたのか、アルシュファイドから客がやってくるようになったんです。試しに飲ませたらうまいと評判になったようで。抽出器具の店もそんな感じです」
「そうか。よかったな」
「ええ、あとは、国内でももっと広まってくれたらいいんですがねえ」
一行は、店員によく礼を言って、コリンは粉砕機をひとつ求め、近くの抽出器具屋にも寄って1人分の抽出器を求めた。
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