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―Ⅲ―
翌日、朏の日になると、一行はパッサ・メキネに向けて出発した。
パッサ・メキネには現在、彩石採石の本拠地があり、宿はその仕事に従事する者たちでいっぱいだった。
宿で荷物を解いたトールとコリンたちは、ヤナとカヌラを宿に残し、ザイを伴って、彩石…緑風石の溜まり場に向かった。
案内されたのは小高い丘の上で、そこには天幕がいくつか張ってあり、トールとコリンたちはそのなかのひとつに入った。
「やあ、トール、コリン、元気だったか!」
そう親しげに声をかけて、近付いてきたのは、ロズワルド・ポルトリンクスという、肩書のない男だ。
だが、国王の信任が厚いとして、重要な任に就くことが多い。
「ロズワルド、久し振りだな」
トールがそう言いながら右手を差し出すと、固く握り、肩を掴む。
「しばらく見ないうちに成長したな!」
言われて、トールは少し笑った。
「気のせいだ、もう成長は止まっている」
「いやいや、会わなかったからこそ判る、成長したさ!」
そう言って、コリンとも握手を交わす。
「コリン!背が伸びたな!ジエナと同じでフォーレン似なんだな!」
「そうなのかな?だとしたらまだ伸びるかな」
「それ以上伸びてどうする!それより肉付きをよくしろ!剣に振り回されるぞ!」
「それは困るな」
「んん!ところでこの子はどういう子だ?」
ロズワルドはザイに目を留めて聞いた。
「俺の護衛だ!まだ剣も教えてないけどな!」
「ふうん?」
コリンの上機嫌な声に、そう呟いて返すと、ロズワルドは一瞬後、鋭い振りで右手をザイの頭上に落とし、当たる寸前で止めた。
ザイは、その流れをじっと見ていたが、ぴくりとも動かず、ロズワルドの手が止まると、水色の瞳をあげた。
じっと、ロズワルドを見つめる。
ロズワルドは、ふっと笑って、視線を逸らした。
「うん、いい者を選んだようだ。よく育てるといい」
コリンは、剣の師匠であるロズワルドに認めさせたザイを、誇らしく思った。
「それはそうと、輸送の仕方を見直したいということだったが。何を見る?」
「最初から。緑風石の溜まり場を見せてほしい」
「ああ、分かった。外に出ようか」
ロズワルドに促されて、一同は天幕を出た。
「取り敢えず全景を見るか。こちらだ」
ロズワルドを先頭に歩いていくと、そう進むことなく、その場所に着いた。
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