荒野の国

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「すぐ崖になっているから、足元に気を付けるんだ。その辺りに立ってみろ」 言われて、トールとコリンは示された箇所に並んで立った。 足元の崖を確認し、目をあげて、息を呑む。 そこには、大きく深い谷があり、その底には、至る所に彩石が転がっていた。 「ここにあるのはほとんどが緑風石だ。そのほかの彩石については、今のところ横に置いている。緑風石の数には遠く及ばないが、それでも集まればちょっとしたものだ。取り扱いについては、まだ決まっていない」 ロズワルドは空を見上げて、言った。 「もうすぐ陽が沈む。作業は終わりだ。明日また、下までおりよう」 そう言われて、トールとコリンは頷いた。 コリンは、戻る前に、ザイに場所を譲って谷底を見せた。 (もっと)も、ザイにはその光景の意味は理解できなかった。 ただ、落ちる陽の光に照らされて、綺麗だな、と思ったのみだ。 一同は、来た道を引き返して、作業終了まで残ると言うロズワルドを残し、宿に戻って汗を流した。 食堂でロズワルドと少量の酒を傾けたあと、トール、コリン、ロズワルド、ルゼナの4人は、談話室で少し話した。 「…ほかの町でも、通りすがりに財布を盗む者はあるのか?」 「なかには、人通りの少ない裏道に誘い込んで、暴力を振るう者もある」 「皆、食べる物を得ようとしているのか?」 「多くは、そうだな。ザイたちは、屋根があるだけ、まだよかった方だ。路上で寝るしかない者もいる。この先の街では、そのような光景も目に入るかもな。だが、ひとつひとつに手を差し伸べていては、ほかのことは何もできないぞ」 ロズワルドの言葉に、トールとコリンは俯いた。 「…今のお前たちには、知ることこそが役目だ。フォーレンには、そういう計らいなのだろう。さあ、今日のところは寝るといい。疲れたろう」 そう促され、トールとコリンは部屋に戻った。 翌日、半の日は、朝から昨日行った緑風石の溜まり場に向かった。 まずは谷底までおりて、採石の様子を確かめる。 「アルシュファイドからは、力量の大きい不完全体の彩石を求められているから、大きな石から運び出しているんだ」 現在、緑風石がカザフィス王国に大量にあることを知っているのは、公にはアルシュファイド王国だけだ。 そのため、今のところ、買い取ってくれるのもアルシュファイド王国だけだ。 「不完全体…質が悪いと言う物だな」 「そうだ」
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