カザフィス王国

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「そうか。ありがとう、ラド」 「はい」 それからしばらく3人で、食事の店を出たあとはこの酒場に行こう、と話し合った。 「ジエナはポス港は初めてか?」 トールの問いに、ジエナは首を横に振りながら答えた。 「いいや、一度行ったことがある。だいぶ前にな。かなり賑わっている港と言えるだろう。アルシュファイドからの旅行者も少なくない」 「そういえば、ニルフィ港にもアルシュファイドからの旅行者が多いようだった。あれは…よいことなのだろうか?」 眉根を寄せるトールに、ジエナは小さく笑って見せた。 「今のところ、うまくいっているようだとなら言える。アルシュファイドの者が増えたことで、店の者たちはあとのことを考えるようになった。親切にしておいて損はない、という考え方だな。お陰でアルシュファイドの旅行者が多い町では、旅がしやすい」 「悪いことはないのか?」 「直接悪いことはないな。ただ、その場その場で稼いでも、国全体を潤すものとはならない。土地による生活の差が広がるだけだ。旅行者で国を潤そうとするなら、そのように国自体が動かなければならない」 トールはそこで、最近始まった事業のことに思い至った。 「それでハルトに客車寄せを作ろうとしているのか」 ジエナは頷いた。 「そうだ。アルシュファイドからの要望はポスだけだが、主要な町に置けるようにしたい。ポスに作るものは、その参考になるものとしたい。レグノリアの客車寄せを見たか?」 「ああ、見た。人と荷物を運び、うまい具合に運用していた」 「荷物とは?」 「通信局から運ぶ荷物だ。大きいものは馬車や船で運ぶらしいな」 「通信局か。なるほど、大きな荷物は、風の強い者でも飛ばせないのだな」 「そのようだ。それで、レグノリアのあの客車寄せをポスに作るということなのか?ハルトでなくていいのか?」 「まずは、観光事業を見据えて、火山区に近い港から始めたい、ということだった」 「観光事業?」 「そうだ。最初は彩石を運び、次は特産品、最終的には、人を運び、観光事業を立ち上げたいということだ」 「彩石の道をそのまま使うのか」 「そうだ。ニルフィと迷ったんだが、現状、ポス港が彩石の輸送には一番なんだ」 「大変な仕事になるな…」 「まずは、馬と客車を揃えることだ。それにも先立つものがいる」 トールは自分の顎を撫でた。
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