カザフィス王国

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「水もだな」 ジエナの言葉に、トールは思い出した。 アルシュファイドでは、城でも宿でも、部屋に洗面台があり、突起を少し回すと自由に水が出せた。 トール自身は水を出せるが、カザフィス国民全員がそうではない。 「そうだな、水もだな…」 トールは星の輝く夜空を見上げた。 半月は明るく、だが夜道を歩くには心許(こころもと)ない。 「ひとつずつやっていこう。すぐにできることじゃない」 トールの気持ちを落ち着けるようにジエナが言った。 「ああ」 「そうだな」 トールとコリンは頷いた。 今はとにかく必要なものを知った。 それをどう埋めていくか。 始まりはこれからだった。
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