カザフィス王国

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「え?ええ、強いですけれど、わたくしたちに比べればそれほどでもありませんのよ。そうですわね、国中には伝達を届けられる程度だと思いますわ。わたくしならば、こちらからサールーンまで飛ばして、返信も受け取れます。そんな感じですわ」 でも、サイセキがないと、往復させるのはちょっと気力が要りますのよ、と続ける。 「よく知った相手でも、サイセキなしでは…ああ、今はどちら側にいても緑風石があるのでした。あ、いえ、私信に使ってはいけませんわね」 ジエナはにっこり笑った。 「使っていいよ。その程度ならね」 エリィは両手を合わせて笑顔を開いた。 「ほんとうですか!ありがとうございます。シェフィにもっと世界のことを教えてあげたいんですわ」 「ああ、きっと世界が広がる」 遠い所を知ることばかりがすべてではないけれど。 こうして向けてもらえる思いこそが世界を広げるだろう。 「シャフト港には見るべきものがあるかい」 「ここはポス港とは様子がまるで違いますのね。第一に、あちらにはたくさんあった倉庫がありませんわ」 「そうだね。すぐ民家が並んでいる。あまり豊かな港じゃないんだよ」 「そうなんですの。でも遠くに大きな建物がたくさん。あれはなんでしょう?」 「あれは軍の設備だ。こちら側は漁港で、あちら側は軍港なんだ。正面に見えるのはほとんど軍艦だ」 「まあ、そうでしたの。ずいぶん船が多いと思いましたわ」 カザフィスには軍艦が多い。 ただし大変に古い。 今すぐ廃船とはならないが、これも問題には違いない。 やることが山積みである今、なんとか頑張ってもらいたいと願う。 願うしかできないことがもどかしいが、今は耐えるしかなかった。 そのうち、クランベルはシャフト港を離れ、ジエナたちは昼食を摂ることにした。 同じ階の食堂に行くと、人が多く、分かれて座ることになった。 ジエナはエリィ、ラド、ハンザ、ポーラと同じ席に着き、揃ってラヌマ料理を食べた。 調理はアルシュファイド風で、だが臭みの和らげ方は香辛料によるものが大きい、サールーン風だった。 「この食べ方、気に入りましたわ!」 エリィの言葉を受けて、ジエナは料理長を呼び、調理法を教えてもらえないか頼んだ。 「いいですよ。ただ香辛料をかなり使いますから、手に入るかどうか…」 「その点は今後解決する予定だ。とにかくありがとう」
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