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イルカは空中を泳ぎ、人を背に乗せ砂漠の海を渡るらしい。波打ち際では気を付けていないと、波の飛沫が急に大蛇の姿で襲いかかるし、空の高いところに住む竜は姿を消せるらしい。もし竜がとんでもなく性格が悪かったりしたら大変だ。
そんな外の話を毎晩、男の尻を踏みつけながら、足をベタベタに舐められながら聞いている。
それが私の楽しみ。
「そう言えば、とんでもない事件が起きてるんだが、知ってるか?知りたいか?」
こういう話し方にも、いちいち腹を立てなくなったのは大きな進歩だ、毎晩、私は賢者や聖職者に近づいているのだと思う。
「えー、分からない、教えてぇ」
こういう時、薬が切れるのか、ふと首が絞まって苦しくなる。
「はっきりした事は分かってないんだが、どうやら頭の中から知識が消えているらしいんだ」
「消えるって、記憶喪失ってこと?」
「そんな単純な話じゃない、分からんかな?」
少し仰け反って私を見下す槍使い。さっさと言えばいいのに、と思うけれど甘い声を出して我慢強く待つ。
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