異世界

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「いんやぁ、いいの撮れたわ。しっかし腹いてぇ!」 金田くんはまだ笑ってる。 「笑ってないで助けろよ!」 「えぇー無理ー!キモいし巻き添えくらうのごめんだしぃ」 何故か気だるげな女子のような話し方をする金田くん。 「あーもうなんて最悪最弱パーティなんだ!」 「パーティ?はぁ?仲間とか思ったことないんすけど」 ゲラゲラ笑いながら金田くんはいう。 クソ、冷徹守銭奴め……。 訳の分からない状況に涙が出そうだ……。 ぶみょんっぶみょんっ 下から間抜けな効果音が聞こえて見てみると、スライムに飲み込まれた水谷くんだ。 「大丈夫だよー」 「その状態で何が大丈夫なの!?」 …… ………… ……………… 「大丈夫、うん」 数秒の沈黙の後にそれか……。 水谷くんが近づいたせいで俺にまとわりつくスライムが増えてしまった。 まずい……まずいぞ……。 「くくくっ、愚かよのぅ。いや、哀れと言うべきか?仲間に見捨てられ、抗うすべもない。安心しろ、今すぐ引導を渡してくれるわい!」 クロブク様の手に何やら禍々しいエネルギーが集まり、野球ボールくらいのどす黒い球体が出現する。 これは笑えない……。 「死ねぇ!」 クロブク様が球体を俺めがけて投げた。 徐々に近づく球体……。 もうダメだ、父さん母さんごめんよ……。せめて死ぬ前に正社員になりたかった……。 俺は諦めて目を閉じた。 バシィンッ! 「いった!……あれ?」 見回すと狭い楽屋だ。 「なーに寝ぼけてんすか」 見上げると丸めた求人誌を持つ金田くんが不機嫌そうにしている。 「え?」 「もう本番近いんで。ほれ」 「ぐはっ!?」 急にヘルメットを被せられたから変な声が出てしまった……。 というか夢オチか!? 「よかった……」 「訳の分からないこと言ってないで行きますよ」 金田くんは冷たい態度で言う。 「行きましょ、本田さん。いえ、ファイアレッド」 水谷くんが優しく言ってくれる。 「おー、行くか」 俺達は舞台袖に待機した。
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