14:嘘つき男と大切なひと

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「俺の両親は二人ともベータでさ、生まれてくる子どももベータなんだろうってことは分かってても、まさか孫の顔が見れないとは思ってなかったみたいで俺の検査結果知ったらショック受けちゃって」 「孫の顔?」 「ほら、最近はあんまり聞かなくなったけど親に孫の顔を見せるのが親孝行みたいなのあるじゃん。孫なら目に入れても痛くないとかって言葉もあるし」 「目に、入れるの?」 「それは例えだよ例え。とにかく、うちの両親は自分たちにおじいちゃんおばあちゃんって呼ばれる未来が無いとは思ってなかったんだ」 「えぇと、その、おかしいこと言ってたらごめんなさいなんだけど、礼くんが好きな人と結婚して養子をもらうんじゃダメなの?」 「その通りだ。彩果はおかしなことは言ってないよ。でも」 「でも?」 「何か、両親はそれでもいいのかもしれないけど俺が受け入れられなくてさ。ほら、夫婦は結局血の繋がりが無い他人同士だけどさ、子はカスガイって言うだろ?」 「コワカスガイって何?」 「あぁ、それはそういうことわざがあるってだけだから気にしなくていいんだけど」 「そうなの?」 「そうなの。とにかく、他人同士が家族になれるのはふたりの血を継いでいる子どもがいるからだって思ってて、どうしてもその感覚を変えられないんだ」 「そっか」     
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