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「妊娠、してるんじゃないの?だから匂いも抑えられて襲われなくなったとか、無い?」
「え、いや、そんな、ことは」
思ってもみなかったことを言われて動揺しながらも自分の腹部に視線を向けてしまう。
「いや、それは無いよ。体調に変化も無いし、毎日元気いっぱいだよ」
「でも、病院には行った方がいいよ。発情期が来てないのは確かなんだし」
「僕は別に平気、だよ。この方が便利だし」
「でも、何か病気だったら大変だし、心配だよ」
「大げさだよ。別にどこか痛いところがある訳でも無いのに」
病院になんか行く気は無かったのだけれど彼の方に視線を戻すといつも笑顔の彼が眉を寄せ、その言葉の通りの表情をしていて気まずくなる。
「何でも無いのに行ったらその、お金の無駄って言うか」
「それならそれで、何でも無いってことが分かって安心できるでしょ?」
「そんなに、心配すること?」
「だって、彩果に何かあったら俺は悔やんでも悔やみきれない」
「わ、分かったよ。分かりました。今度、今度病院行くから」
「絶対だよ?」
「う、うん」
これで彼が安心してくれるならと自分が折れると礼くんは僕の手を握って念を押した。
「行くよ。行くからそんな心配そうな顔しないで」
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