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「何を、じゃないよ。もし自分が灯季の子ども妊娠してたとしたら、どう思うの?」
「えっ、と、」
「そっかー」
「え?」
「今彩果、ちょっと笑ったから」
「嘘、」
笑ったなんて実感は無くて自分の顔をぺたぺたと触るが、よくは分からなかった。
「そっちも心配なんだよな。これだけ一緒にいるのに彩果がちゃんと笑ってるところ一度も見たこと無いし、泣いているところも見たことが無い」
「それって、そんなにおかしいこと?」
「どうだろうなぁ。俺の周りも大概おかしい奴しかいないから、それと比べちゃうとよく分からなくなるんだよなぁ」
そう言う礼くんの顔はいつも通りの笑顔で、僕は彼の学友、ではなく同僚から聞いた話を思い出していた。
僕の学校にいるやたら髪の色が目立つ人。礼くんと髪が赤い人と青い人は同じ部署の同僚同士で彼らが時折集まって会話をしていたのは仲良く雑談をしていた訳では無く仕事の情報交換をしていたらしい。
礼くんの素性を知ってから何度かその会話の輪に加わったことがあるのだけれど、話の大半はここ近辺の要注意人物についてや最近起こった事件についてで、それはまぁ仕事熱心なんだなぁと思うのだけれど僕が吐き気をもよおすような話を三人とも平然とするから驚く。
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