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「何でって、道が分からんから料理屋を探してうろついている最中に門の前にド派手な飾りが置かれた屋敷が目についてな。今に至る」
「ここは今、結婚式を行うために貸し切りになっています。正式に呼ばれた出席者じゃないと料理は食べられませんよ」
「ケチだな」
「道が分からないということは警察署の場所も分からないんですよね?」
「当然だ」
「だから何で偉そうなんですか」
確か僕の荷物に筆記用具が入っていたはずだ。目の前の男から視線を逸らし、あたりを見回して鞄を探す。
「警察署までの地図を書いてあげられればそれが一番だったんですが、僕もここがどこなのか分かっていなくて。場所を訊くまでは僕も一緒に行きますからそれからは自分で何とかできますね?」
彼に向かってそう問いかけたところで部屋のはじに自分が着てきた衣服と共に鞄が置かれているのが目に入り、そこに足を進めようとすると胸元にぬっと腕が伸びてきてその両手が着物の左右の襟をそれぞれ掴んだ。
「な」
何ですか。そう口にする前に胸元をがばっと開かれる。
「あぁ、やっぱり男か」
「や、やっぱりじゃないでしょう。これ、着るのにどれだけ時間が掛かったと、性別が気になったなら訊いてくれれば」
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