芯まで愛して

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「四十代をいたぶるな」 「榛名さんだって、愛も平和も説いたことがないくせにジョン・レノンと比べるのっておこがましくない?」 「むしろ信じてない側の人間だからな」 「……恋人の前でソレ言う?」  涼一がため息をつく脇で、榛名はようやく口をすすぎ、鏡に近寄って頬のあたりをじっくり観察する。そこには不揃いな点が散っていた。 「シミ一つないピチピチの二十歳の男の横に立たなきゃいけない俺の気持ちを察しろよ」 「ピチピチって……」 「死語だって言いたいんだろ。悪かったなオッサンで。どうせインスタもツイッターもやってなければ、基礎代謝も低いよ」 「もう、拗ねないでよ」  背を向けて去ろうとする榛名の手を掴み、引き寄せる。後ろから抱きしめると、口で言うほど不貞腐れてはいないらしく、大人しく包み込まれてくれた。 「そばかすが増えてショックなの分かるけど、そろそろ機嫌直してよ」 「こんな年増のゲイなんかやめて、同年代と付き合えよ。そうすれば、俺は自分の老いに罪悪感を感じずにすむ」 「……そばかす、かわいいのに」  むくれてそっぽを向いた頬に、涼一は口づける。 「これはそばかすじゃない。ただのシミだ。老化の証だ!」     
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