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そわそわと落ち着かない様子が、物慣れなくて初々しい。いくら年齢が若くとも、なんの緊張感もなくあっさり股を開かれるより、榛名の不器用な素振りの方がずっと涼一を興奮させてくれる。
「俺も喉乾いたから、ちょっと水飲んできていい?」
「も、もちろんだ」
緊張を悟られまいと平然と振舞っているつもりなのが、手に取るように分かり、榛名は笑いを噛み殺す。
涼一はキッチンへ行くと、ゴミ箱をのぞいた。
燃えるゴミとビンカン用のペールがそれぞれあるほかに、紙袋に紙ごみがまとめられている。
包装紙や箱類が詰められた紙袋の一番上に、見慣れぬキラキラした小さな箱を見つけ、涼一は手にとった。
箱には『スゴ百』という商品名が金文字で書かれている。
黒い箱に燃え上がる炎の写真と金色の文字。ただの栄養ドリンクではないぞという迫力が見事に漂ってくるパッケージだ。
「芯からみなぎる、先までみなぎる……」
「無邪気にキャッチコピーを読み上げるなバカ」
振り返ると、榛名が不機嫌な顔で腕組みをして立っていた。
「栄養ドリンク? 榛名さん、疲れてたの?」
試しに知らない振りをしてみたが、榛名はお見通しのようで、舌打ちをされる。
「知っててわざととぼけてるんだろう? 意地が悪いぞ」
「育ての親に似たんじゃない?」
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