芯まで愛して

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 けろりと言い返し、涼一は成分表をじっくり眺める。聞きなれない言葉ばかりで分からないが、それでもパッケージの雰囲気だけで大体の情報が伝わってくるのが凄いと、つい感心してしまう。 「武士の情けって言葉を知らないのか、お前は」  見て見ぬ振りなんかしてあげないよとばかりに、涼一は片頬を上げ、意地悪な笑みを浮かべる。 「ねぇ、せっかく飲んだんだから試そうよ。ほんとに先までみなぎるのか見てあげる」  素直に寝室に戻るのも癪なのだろう。もう押しても引いても動いてくれなかった。  仕方なく、その場で立ったままキスをする。幸いにも、渋々受け入れてくれてほっとする。榛名をいじめるのは楽しいが、やり過ぎるとセックスさせてもらえないので、塩梅が難しい。  涼一よりも体温の低い口中を、舌で探る。いつもと違う、漢方薬のような味がうっすらとした。  薄い榛名の舌をからめとり、啜って引き出す。涼一がその舌先を甘噛みすると、鼻にかかった甘い声が漏れた。 「ふふっ、変な味のキス」  涼一が小さく笑うと、榛名もつられて表情を崩す。一つ目の鎧は脱がせられたらしい。榛名が声を立てずに笑うと、温かい吐息が涼一の首筋を撫でた。  涼一は、榛名の髪に鼻を埋めて息を深く吸う。榛名は加齢臭がどうのこうのと言いそうだが、涼一は榛名の体臭が好きだった。 「ここ、いっぱい舐めたい」     
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