26人が本棚に入れています
本棚に追加
蛇の絵柄の古銭を指で弾いて宙に投げたとき、部屋の奥の壁が開いた。
「見つけたぞ!犯罪者め…!!!」
プロテクターを装備した剣士と、マントに身を包んだ魔法使い、弓兵がぞろぞろ中に入ってきた。
「…………誰が、犯罪者だって……?」
「とぼけたって無駄だ。卵泥棒に詐欺師、悪魔に身を売り渡した異端の者とはお前たちのことであろう!!」
先頭の剣士がビシイッとおれたちを指差した。
詐欺師と悪魔に身を売り渡した異端者ってのは大体予想がつくが、
「……卵泥棒って何だよ!?おれは卵なんてしょーもない物盗まねーよ!」
「盗む奴は皆、自分は盗まないと言う。この手配書を見ても同じことが言えるか?」
剣士は懐から3枚の紙切れを差し出した。
似顔絵の下にはDEAD OR ALIVEの文字が見える。賞金首の手配書だった。
「あら、この手配書…剣と魔法の国の紋章が入っているわね」
「剣と魔法の国といえば、〈竜殺しの勇者〉がいる国ですよね!?」
「ほう、よく書けているな。何々?賞金は、……なんだ、はした金か…」
オーロは手配書をグシャグシャに丸めると松明の火の中へ放り込んだ。
「な、何をするっ!?」
弓兵が叫んだ。
「必要ないだろう。俺たちは犯罪者じゃないからな。用も済んだし、帰らせてもらおう」
面倒なものが出て来た。長居はしたくない。オーロが目配せして一歩後ろに足を踏み出したとき、剣士がオーロに剣を向けた。
「逃げようったってそうはいかない、犯罪者め!王女の誘拐では飽き足らず古代王の墓を荒らしに来たのだろう?」
「……はっ!?」
こいつは何を言っている。卵泥棒の次は王女誘拐とは一体どういうことだ。
「ペシェ姫、ご安心ください。この勇者ディーンが来たからには貴女を犯罪者どもの手から救い出してみせます!」
「………ハア!?」
ペシェも何言ってんのあんたという表情を浮かべている。
「こちらの話を聞いてくれなさそうだな」
「どうしますか?」
「どうするもこうするも、」
煙玉を自分と勇者とやらの間に放り投げて叫んだ。
「逃げるしかねーだろ!」
それを合図に自分たちが入ってきた扉に向かう。後ろではゴホゴホと咳き込む音と、「卑怯者」だとか「姫を返せ」だとか、聞こえてきたがそれに応えている余裕はない。
護衛人と共におれたちはゴンドラに飛び乗った。
最初のコメントを投稿しよう!