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「急げ!」「はやく」
ハンドルを逆回りに素早く回しているが、速度は変わらない。早く早く下に降りようという気持ちだけが焦る。
「多少の時間稼ぎはしたが、火の魔法を飛ばされると厄介だぜ」
「ヒル、何かないのか!?」
「申し訳ありません」
「ペシェ、攻撃されたら盛大に悲鳴を上げろ!お前を盾にすれば奴らは攻撃してこない」
「ひどい!オーロの鬼畜!!」
「フリでいい。盾にされたというフリだけだ。奴らにしてみればペシェは犯罪者に拉致されたお姫様だからな」
ヒュヒュン、
目の前を火の矢が通り過ぎた。
「げ!もう来たぜ」
「ペシェ、」
オーロの合図でペシェは大声を出す。
「キャアアアッ!何するのよ!わたくしを盾にするなんて!……いやあっ!!」
効果は絶大で、ゴンドラが下に到着しても次の攻撃が繰り出されることはなかった。
来た道を駆け足で戻っていくと最初の壁が閉まっていた。
「閉まってる!閉じ込められた……!?」
「いや、出られるぜ」
こちら側の壁にもコインを入れる溝があった。迷うことなく溝にメレセグルの部屋で見つけた古銭を溝に差し込む。
ゴゴゴゴ………ッーー
「開いた…?」
「蛇の古銭は帰りの切符代わりですか…」
「そーいうこと!」
「さあ、ここから出るぞ」
松明に火を付けると何かが視界の隅でゆらりと動いた。ソレは、骨だけで出来ていてふらふらとこちらに寄ってくる。
「うわぁ…!スケルトンアンデッドですか!見事な骨格ですね!!」
ヒルが感嘆の声をあげた。
「……アンデッドを見て喜ぶ変態はヒルだけよ!」
「白魔術師様のお出ましだな」
「えー、倒してしまうんですか…?」
「今回は逃げることが優先だが、挟み撃ちされたら全滅するからな。研究用に取っておくのはやめてくれ」
「せっかく良い状態の骨なのに、もったいない…」
ヒルは近付いてくるスケルトンたちに向かって残念そうに白魔術を解き放った。
共同墓地を抜けてダンジョンの入り口に戻ってくると、行くときにオーロと話していた商人が駆け寄ってきて見覚えのある紙切れを見せた。
「あんたたち、大変なことになってるぞ!」
おれとオーロとヒルの顔写真の下には第三王女誘拐犯と書いてある。剣と魔法の国の手配書ではなく、この国の手配書だった。
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