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「ダンジョンに入っていってすぐオアシスから届いたんだ」
「そうか。護衛人とはここで別れた方がいいな」
商人が用意していたフード付きのマントと口布を受け取って上から被るとオーロが護衛2人に報酬を渡した。
ここで別れるのは、追っ手に捕まったときのことを考えてのことだった。一緒に行動したことで罪を負わされることもある。
「今回は契約の支払額以上に色を付けておいた。またよろしく頼む」
口止め料の上乗せだった。こうしておくことで、たとえ手配書に載っても不利な情報を漏らされる心配はない。護衛の仕事は信用第一。たった1度の賞金よりも、護衛依頼をこなして長く雇われる方が信用も職も失わないことを彼らは知っているからだ。
「ありがとうございます。そちらもお気を付けて」
護衛2人がホクホクした顔で去って行く。
「あんたたちはどうするんだ…?」
「まずは砂漠を抜けてから考える。なに、心配はいらない。たまにはこういうこともある
だろ」
オーロがニヤリと笑うと商人があきれた。
「詐欺師と誘拐犯の重複罪にかけられて笑っていられるのはあんたぐらいさ、オーロ」
「俺は楽観主義だからな」
商人と別れて外に出ると日が傾いて星が出始めていた。
「神のご加護があったようデスネ」
「あんたは……!!」
ラクダを連れているガイドは会ったときと同じようにニコニコしていた。
「助かったぜ!まさか古銭が鍵だとは思ってもみなかったけどな」
「イエイエ、お礼を言うのはワタシのほうデスヨ。ご先祖様のお墓参りをしていただきありがとうござイマス」
「先祖ってあんた、王様の子孫なのか!?」
「砂漠の民は皆、王の子孫なのデスヨ」
「へー、そういうもんか」
ラクダに乗って砂漠の中を駆けていく。
日が傾きオレンジ色の空に星が見えていた。
「本当に砂賊の領域を通っていくのデスカ?」
「今はそっちの方が安全だからな」
「ここまでにしておこう。気を付けて帰ってくれ」
砂賊は砂漠に出没する賞金稼ぎ集団で、ならず者が多いため地元の人間から恐れられている。ガイドは不安げな顔でおれたちを見る。
「心配すんなって!オッチャン、また会えるよ」
「まだ依頼の報酬を受け取ってないからな。その時にまたこちらへ寄らせてもらう」
ガイドと別れたおれたちは砂賊の領域に足を踏み入れる。夜はすぐそこだった。
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