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転送呪文は高度な魔法で、高位導師の称号を持つ者にしか使えない。彼らはプライドが高く魔法を雑用に使うことを嫌っているためか商人とは手を組まない。
「そうか、柔軟な考えの魔法使いか…」
オーロは俺たちを見回した。
「僕は異端ですから、仲間捜しは難しいと思います」
「この国の宮廷魔法使いはプライドが邪魔して人の話も聞けないわ…。国外の魔法使いを探すしかないわね」
「ドラゴ、帰ったらそれらしき情報を当たってみてくれ」
「おう、わかった」
オーロは欲しいものは手に入れる主義だ。交渉も巧いけど、何かを決めるときもオーロがいるとサクッと決まる。
今回の依頼はオーロが持ってきた。オアシスの礼拝堂から王の墓場で神に祈りを捧げ、古代神の怒りを静めてほしいという依頼で、報酬はアロエとオアシスにしか実らないココヤシの実。
物々交換だがこれが馬鹿にならない。オアシスだけに実るココヤシの実は5年に1度しか実らない国宝級の実で、競りに出したら一生遊んで暮らせる程の値がつく。
オーロは競りには出さず後の何かの交換材料として使うつもりだろう。
商人と別れると護衛2人を引き連れたおれたちは狭い通路を進んでいく。ピラミッドの中は光が全く差し込まないから、松明がないと暗闇で見えない。
「ちょい待ち、ここは……」
松明の火を近付けると、そこから奥の通路はでこぼこの石畳になっていた。
「確かこの辺にあるはず…、っとここか?」
色の違う壁を押すとどこかでガコンと音がした。罠解除の音だ。最初の方の罠だから回り道か蛇が落ちてくるくらいの嫌がらせ程度だろうが、時間のロスは取りたくない。
通路を進むと共同墓地へ出た。ヒンヤリとしているが心地良いとは言えない。土壁の至る所に人骨が見えるからだ。動物らしき骨もある。
「骨になっていて良かったわ」
「ペシェは気持ち悪い系は苦手ですね…」
「…歩くミイラはやめてほしいわ」
ペシェはぶるりと身を震わせる。
「ピラミッドで怖いのって言ったらゾンビだろ!?」
「アンデッドは興味深い分野だと思いますが…」
「ヒル、そんなことを言うのはお前だけだ!」
「ドラゴも平気なんでしたっけ?」
「まあな、アンデッドはナイフ投げの練習台に持って来いだな。核以外は刺しても死なねえし、すぐ再生するしな!」
共同墓地の奥には上へ登っていく通路と下へ下る通路があった。
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