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ドラゴは礼拝堂の神官から渡されたピラミッド内部の地図を取り出した。オアシスの行商人が売っている地図よりも正確で罠の位置も書き込んである。共同墓地から上の通路は王の墓への道、下の通路の先は未調査となっていた。
依頼内容は祈りを捧げる事だが、おれたちはダンジョン攻略も兼ねている。下の階の調査を終えてから地図に記された通りの道を行けば迷うことはない。
「よっしゃ、いくぜ!」
通路の幅は大人が5人並んで歩けるほど余裕があり、罠の1つもなく数十分歩けば行き止まりに行き当たった。
「ここで終わり?」
「いや、先があるぜ。この壁はフェイクだ」
今まで歩いてきた通路の壁と行き止まりの壁は土の質が違う。
「どこかに壁を開ける仕掛けがあるはずだ」
ささっと行き止まりの壁の近くをあちこち探せば、壁の中心に一カ所だけ硬い部分が見つかった。手で土を払いのけると、小さな鍵穴のような溝が現れた。
「これは、鍵穴…?」
護衛人のひとりが言った。
「鍵もここに隠されているんですか?」
もうひとりの護衛人が聞いた。
「いや、ここにはなかった…」
上の道かも…と思ったときオーロが口を開いた。
「…なぁ、俺の目には金を入れる溝にしか見えないんだが……」
「えっ……!?」
「まぁ、言われてみれば確かに…」
「貯金箱みたいなものですね」
ドラゴはガイドと別れるときに「神のご加護がありますように」と渡された古銭のことをふと思い出した。ピラミッドが完成した年に鋳造されたものだと言っていた。
懐から取り出した古銭を手に取ると溝の幅と古銭の厚さを比べてみる。ピッタリだった。それを迷いもなく溝の中に差し込む。
「……入れてしまわれるんですか!?」
護衛人が慌てた。
「ま、見てなって。おれの直感が外れたことはないから」
「奴は神が味方してくれてるらしいからな」
「盗賊だけどね」
古銭を入れて少し経つと行き止まりの壁がゆっくり上に持ち上がっていく。
ゴ、ゴ…ゴ…ゴゴ…ッ……
「な、言った通りだったろ?」
あっけに取られている2人の護衛人にニヤリと笑う。
「神のご加護がありましたね」
「そうだな」
まさかコインが鍵になっていようとは。この壁の先が未調査のままなのは、鍵がなかなか手に入らないからなのだ。帰りにあのガイドに出会ったら古銭のことを詳しく聞いてみることにした。
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