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桂が窓を開けていたので、街を覆う夏みかんの花の香りが此処まで入り込んできていた。
眩しい夕暮れの光を見つめながら、夏巳は思う。
まあ、この平和な町に探偵はいらないと思うけど。
先生が居なくなってしまうと、ちょっと寂しいから――。
「ああ、祥華がいつでもサンタを逃がしていいって言ってましたよ」
と言うと、桂はまるで大事件に遭遇した探偵のような渋い顔をし、
「それはいい」
と言ってくる。
相変わらず、無駄に格好いい。
そう思いながら、夏巳は少し笑った――。
完
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