というわけで、あなたが犯人です

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  「――というわけで奥さんが犯人です」 と言うのが聞こえてきた。  夏巳は、ええっ? と思い、桂の方を見る。  まだ横で小笠原が一生懸命しゃべっていたのだが。  このまま放っておいたら、平川さんの奥さんが、事件かそうじゃないかわからないものの、犯人にされてしまうっ、と思った夏巳は、先程から桂がなにを話していたのか、記憶を再生してみた。  小笠原と話しながらも、桂の印象的な声は、なんとなく耳に入り、その姿も目に焼きついていたからだ。  ……この人は、コッソリ犯罪とか犯せない人だな、と桂を見ながら、夏巳は思う。  通りすがっただけで、誰もが彼の言動をささいなことまで、記憶していそうだからだ。  習い事のあと、食事をし、村田という人物と食事に行ったと言う平川の妻は、桂に命じられるがままに、財布からレシートを出し、彼に渡していた。  桂が彼女にレシートを要求したのは、食事を終えた時間を確認するためだろう。  だが、レシートには、日付と時間と人数は書いてあるが、誰が行ったのかまでは記載されていないので、何処からかレシートを入手するという手もある。  しかし、後から店に問い合わせられると困るし。  レシートを探すときの、あら、あるかしら? みたいな困った感じからいって、おそらく、それは工作により、用意されていたものではない。
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