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桂は奥さんから手渡されたレシートを手に、深く頷いていた。
この辺で、
「おかしな言いがかりはやめてくださいっ」
と奥さんが怒り出してもいいようなものだが。
すっかり桂にやられている彼女は、
私、貴方のためにレシートを探しましたっ。
褒めてくださいっ、と言わんばかりの瞳で桂を見つめている。
確かに。
思慮深い瞳でレシートを見つめている桂の顔は魅力的だが――。
……奥さん、この人、言ってることと、やってることはむちゃくちゃですよ。
そろそろ殴ってもいいですよ、と夏巳は思っていた。
だが、彼女は桂を殴ることもなく、桂は彼女に向かい、こう言い出した。
「奥さん、日頃からご主人に対して、なにか不満とかありませんでしたか?」
「は?」
と奥さんは訊き返す。
……特になかったようだ。
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