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次の週末・・あの女、御堂麗香は公言通り私を迎えに来た・・・と言っても正確には迎えをよこした。
あの女の関係者とかいう男の人が車で迎えに来た。
年は30代前半だろうか?・・背の高い切れ長の綺麗な目が印象の甘いマスクの人だった。
世間一般にはイケメンと言われる部類だろう。
「黒田と申します。麗香様の仰せにより・・お迎えに上がりました」
気に入らない・・・あの女の関係者というだけで虫酸が走った。
「・・・・・」
私は彼が開けたドアから無言で車に乗り込んだ。
自分の意思に関係なく転校を余儀なく強いられた上・・今から何処に住むのかも知らされていない。
走る車の窓から流れる景色を見ながら考えることを止めた。
足掻くことも逆らうことも許されない・・私は人形だ・・心を捨てた。
あの女の前では言葉を発しない人形に徹することにした。
私を乗せた車は2時間程すると賑やかな都心へと入って行った。
男の人は始終無言だった・・会話しなくて済む分、気が楽だった。
都心に入って20分もしたところで某、有名ホテルの正面玄関に車が横付けされた。
車が停止するのと同時にホテルのスタッフが車のドアを開けて恭しく出迎えてくれた。
スタッフについて中に入ると・・あの女がフロントの前に待っていた。
「咲耶、時間が無いから急いで!」
「・・・・・」
はっ?・・勝手な話だ・・・指定した時間通りに来てやったのに・・・相変わらずの言い分だ。
御堂麗香は急いで私をエレベ―タ―に押し込むと何処かの階の一室に連れ込んだ。
「葵、お願い!」
「うわぁ・・・何・・この子?すっごく綺麗なんですけど・・」
男か女か定かでない・・・その人は私を見て妙な事を言った。
「なによ・・この肌・・・まっ白じゃない。髪も真っ黒でツヤツヤしてて・・綺麗。・・それに・・なんなの?・・この瞳の色・・翡翠みたい・・まるで芸術品だわ~見惚れちゃう~」
・・煩い・・・なんなんだこの男女は?
「葵、能書きはいいから急いでちょうだい。この子に似合う服、選んでメイクもお願い」
「もう・・見てるだけでドキドキしちゃうわ・・・あたしのイメージで仕上げるわね」
男?・・女?・・所謂、オカマはハイテンションで訳のわからない事を言いながら私を鏡の前に座らせた。
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