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なんで、此処にボクは居るんだろ……。うーん、考えるのも面倒くさい。
殊祢は、案内された部屋の煉瓦調壁を指でなぞりながら、床に座り込みそのままうつらうつらと微睡んでいた。
死んだ躯(からだ)も疲れるもんなんだ……変なの……。
一度死んだ躯、二度も死なないとは言え、寒さも感じれば疲労も感じる。いや、そうやって思いこんでいるだけなのかもしれない。死んだ人間が存在があると思いたいがために。ともすれば、誰かの夢物語の登場人物と言われても、自分は存在していると言う確証が無いため信じてしまうだろう。
そういえば、外って危ないんだってね。バグとか言ってたような……。めんどくさ。寝よ。面倒事はごめんだね。
殊祢は自身に憑いて群がった〝バグ〟の集まりがこの安全地帯の周りに息を潜めて始めたことに気付いては居なかった。いや、知る由もなかった。
深い眠りに就きながら、悪戯しがいの有りそうな人や悪戯のトラップの仕掛けやすそうな所をピックアップしていく。まじまじ見たわけではないが、さらりと見ただけでも悪戯の仕掛けやすそうなポイントを幾つか見つけていたようだ。
「くくく……お兄さん……まぁた、ひっかかった……わかりやすいよ……」
すやすやと寝息をたて、寝言を言う殊祢。気が緩みすぎと言えば其処までだが、殊祢はこのパンドラにやってきたばかり。まだ知らないのだ、バグがどれほど恐ろしいのかを。
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