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ふーむ。其れにしても、人っ子一人居ないのか。
此処、本当にセカイとして成り立ってるの?
『あら、貴方……新人さん? いらっしゃい』
ふと、道行く少女に鈴音の様にカラコロと鳴る声を掛けてきた見た目も幼い娘子。
「どーも。キミは?」
『私は天使だ』
少しばかり胸を張り、凄いだろう? と言いたげで。
おっどろいた。今時の、天使ってこんな幼女なの。
一瞬、迷子かと思ったよ。
いや、本当。
『聞こえてるぞ。失礼な娘』
「ボクは、小鳥遊 殊祢だ。失礼な娘じゃない」
呆れた様子で天使は肩を落とした。それに、ムッとしたのか殊祢はやや吊り上がった目で天使を見下ろしながらも自分の名前を告げた。
……のだが、そんな事はどうでも良いと言わんばかりに、天使は歩き出した様子。その後を慌てて追い掛ける殊祢。
天使とは、マイペースな生き物なのだろうか。
はたまた、常人より上に存在しているから他人に合わせるという事を知らないのか。
この天使の場合……どちらでもないように思える。
この天使は一体……ボクを何処に連れて行く気なのだろうか。
ただ、鼻歌を楽しそうに奏でている天使の後をボクは着いていく他無かっただけかも知れない。
否、ボクは天使に着いていくか着いていかないかの選択で、着いていくを撰んだのだ。
一つの選択ミスで大惨事になる、命取りのゲームを。
此方に来たばかりの少女が知る由もなかった。
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