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「何処に行くのさ。ボク、歩き疲れたんだけど」
『はぁ? そんなこと言ったって、未だ2分も歩いてないぞ』
疲れたものはしょうがないじゃないか。だって、疲れたんだもん。
「キミ天使なんでしょー? ボク、持って飛べたりしないの?」
『阿呆か……。見ての通り、か弱い女の子だぞ』
ちぇー詰まんないの。所詮、天使も幼女かー。
天使と出逢う前から歩き回わっている殊祢と、先程殊祢の前に出没した天使。
殊祢は疲れたと天使に向かいぼやいているが、適当にあしらわれてしまった様子。
殊祢は、唇を尖らせ詰まらない等と愚痴愚痴言いながら、大人しく天使に着いていく事にした。
か弱い女の子と言う天使。この世界で絶対的な力を有していそうな天使。
本人が言うのだから、か弱いのかも知れないが、ただただ愉快犯なだけなのかも知れない。
「キミキミ、此処って何処なの」
『死後の世界や死者の世界と貴方達が言っている世界だ。だが、私はこの世界を“パンドラ”と呼んでいる』
「あ、やっぱ死後の世界なんだ」
『いや、正確にはあの世とこの世の狭間の空間かな。そう言う意味でも、此処には穢れも溜まりやすいんだ』
天使の話す説明が殊祢には聊か難しかったのか殊祢は小首を傾げた。
本を好んで読むわけでもなければ、勉学が得意なわけでもない殊祢。
あの世とこの世の狭間だとか、穢れだとか、そんな事を言われて理解出来る程、賢くはないようだ。
うむうむ唸り、首を捻りながらも頷いた。
『ほら、見えてきたぞ。もうすぐ着く』
天使が指を指した先には4つの個性豊かな建物が並び、小さな学園の様になっていた。
殊祢は、其れを見るなりぱぁぁと顔色を良くした。
「よーやく休めるーぅっ!!」
『五月蝿いぞ』
休めると思った殊祢は大きな声で、漸く休める事を喜んでいた。
直ぐに、天使に五月蝿いと睨まれ少ししゅんとしていたが。然し、それでも先程とは違い目にはキラキラとした光があり、早く行こうと言わんばかりに天使の手を取りブンブン振りながら歩いていた。
『手が取れるじゃない、痛いから辞めなさい』
「えー? 別にいーじゃん。あ、手繋ぐと一寸温いかも」
『はぁ……』
深い深い溜息を吐いた天使は呆れた様子で、渋々殊祢に手を握らせていた。
それ程、殊祢の手は冷たかったと言うのも在るかも知れないが。
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