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手を繋ぎ、少女と天使は小さな学園の門の前に居た。
『此処は、この世界で一番安全な場所だ』
天使は、殊祢に一番安全な場所だと告げた。そう、其れはまるでこの場所以外は危険な場所であると、意味したも同然だった。
「ふぅん。安全なんだ。じゃあ、アレだ。ボクが今まで彷徨っていた所は危ないんだね」
『そうだよ。寧ろ私は、何故貴方がバグに遭わなかったのかが謎だが』
「バグ? 何ソレ。ま、早く入ろうよ。寒いし」
『わわっ、こら、待てっ』
少女は天使の手を引き門の中へと、足を踏み入れた。四角く囲まれた門の中。それぞれ角に四つ先程見えた建物が有った。
左手には、御噺にも出てきそうな煉瓦の壁の二階建ての建物と、古民家風長い廊下の建物。
右手には、水色の壁の木造平屋の大きな建物と、なにやら甘美な香りがするこれまた大きな二階建て建物と、西洋の城の様な建物。
正面、煉瓦の壁の二階建ての建物と水色の壁の木造平屋の大きな建物の間には、体育館の様な建物が建っていた。
学園と言うよりは、学園に付随する寮の様だった。周りは高い塀で囲まれ、外部からの侵入は不可に等しい場所。
「学校? うぇー、ボク、学校きらーい
」
『学校ではない。此処は貴方の様にパンドラに姿形在るままに来たモノが集う場所。則ち、貴方の仲間だな』
「なかま? 要らないね。ボクは、人と一緒なんて嫌だ」
『じゃあ、寒空の下、凍え死んでも知らないよ。バグに襲われると言う選択肢もあるね。まあ、この世界にいる以上死んでるから死なないけど』
「其れはヤだ」
なんとも、我儘な殊祢は反論するも天使には適わず。膨れっ面になりながらも、殊祢は天使と共にその塀に囲まれた空間の中心…中庭に立ち止まった。
そんな殊祢達に不意に話し掛けてきた、ガスマスクの男。
「何だ、その娘は、、、」
『新入りだよ』
「そうか、、、。俺は、クロノス=ブラッディフォールドだ」
ガスマスクの様な仮面を着けた男は、名乗るだけ名乗り体育館らしき建物へと消えて行った。
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