『死後の世界』

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男が去った後。中庭に残った天使と少女。天使が不意に口を開いた。 『さて、パンドラに来たからには寮に入ってもらうよ』 『大丈夫、そんなに心配要らないさ。寮は全部で4つ』 『あぁ、寮毎に特色があるから自分に合った処を選ぶといいよ』 「ただいま~。疲れたよ~、友紀也ぁ」 「鳴海は、逃げ回ってただけだろっ」 「ほら、僕弱いから」 「皆、ちゃんと己の仕事をして居たじゃないか」 「慶喜も、何もしてないだろ!」 「俺は、傍観するのが仕事だから」 「あぁ、くそっ」 騒がしいとも取れる男声が響く。その声の主らの話からして仲の好い事が判る。唯一の安全な場所より外での“仕事”を終わらせてきたと。 『あら、お帰りなさい』 「天使ちゃんか。そのお隣は?」 「わぁぁっ!! 女の子だよっ。可愛い女の子が居るよ~!」 「うるさ……」 「鳴海、落ち着け...」 天使の姿を見つけるなり話しかけてきた青髪眼鏡の青年。 少女に駆け寄ってきた明るい茶髪の青年。 そんな茶髪の青年を見るなり頭を抱える栗色の髪の青年。 総てにおいて面倒だと、煩いと呟く少女。 『この娘は新入りの小鳥遊 殊祢だ』 「宜しくしたくないけどよろしく」 『あぁ、丁度佳い。今、寮について話していた所だし、挨拶でもしたらどうだ』 「僕の名前は或國鳴海、鳴海ちゃんって呼んでね♪ 僕は、ルベルパッセル寮に居るよ~。是非是非! 来てね~」 明るい茶髪の青年はにこっと笑み少女に、ウィンクと共に親しげに告げた。暢気に、水色の木造平屋を指しながらひらひら手を振り少女を誘う。 「はっ...。鳴海は変わらないな。あぁ、俺の名前は瀬田慶喜、以後お見知りおきを...。俺は、アルブムティグリス寮に居る。鳴海と友紀也と幼馴染みだ」 青髪眼鏡の青年は着物ながらに丁寧な所作で御辞儀をした。古民家風の長廊下の在る建物を指差し、次に先程の茶髪の青年と、栗色髪の青年を見て関係を簡潔に述べた。 天使が『けーき……。何回聞いても美味しそうな名前だな』と呟いていたがこの際聞かなかったことにしよう。 「最後は、俺だね。俺の名前は食満友紀也、カエルラドラコ寮に居るよ。このマフラーもカエルラドラコ寮に入ると貰えるよ」 栗色髪の青年は人当たりの良い笑みを浮かべると、煉瓦の壁の建物を指し、マフラーを持って見せた。
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