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殊祢は軽く名を告げ、毎回毎回、会う人会う人に名乗らねばならないと思うと億劫だと、溜息を吐いた。
真琴は、軽く「そう……高梨ちゃん」と復唱すれば、再びソファーに身体を預けた。
「ボクは、小鳥が遊ぶと書いて小鳥遊だ。高梨じゃない」
「え? そうだったの?」
『小鳥遊と言う姓自体、珍しいかも知れないな』
異論する殊祢に、今まで“高梨”だと思っていたらしい友紀也は、殊祢を見て「ごめんね」と言い、対して天使は、普段から耳にしない姓だからだとフォローした。
そんな中、真琴は変わらずのんびりとした口調で――。
「そっか……小鳥ちゃんか……」
と、一人納得した様子で枕に顔を埋める。その後、静かな寝息が聞こえる迄数分と掛からなかった。
その、真琴の様を見て納得出来ていない様子の殊祢。そんな、殊祢の心境を知らずか。
『小鳥ちゃんか……なかなか良いじゃないか』
「“いもてんちゃん”に言われたくない……」
『っな……』
天使は、殊祢に対する真琴の“小鳥ちゃん”と言う呼び方を気に入ったらしいが、それがあまり好みではない殊祢は静まった室内で“いもてんちゃん”と、含み笑いで天使を呼んだ。
当然、天使が“いもてんちゃん”に反論しだす。
その二人の遣り取りを見ていた食満は、微苦笑を浮かべながら、溜息を一つ吐き。
「まぁ.....。それだけ、この囲いの中は平和って事かな...。」
と、新たな客で少し賑やかになったパンドラの寮内から窓の外の景色を見ながら独り言の様に呟いていた。
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