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目が覚めるとそこは屋外階段の踊り場だった。
そして、冷たい風に吹かれている僕がいた。
「おやおや、客人かい?珍しいね。」
「ここは...。」
「ここかい?ここは天の図書館さ。」
僕が立ち上がると、激しい頭痛と耳鳴りが襲ってきていた。
それに耐えながら声のした後ろを振り向くと、そこには"こちら入り口"と書かれた札が、立派な扉にかけられていた。
「さぁ、入っておいで。」
僕は素直に扉を押した。
「一緒にお茶を飲まないか?真名瀬 槭樹くん?」
「なんで僕の名前を?」
頭痛と耳鳴りは止んでいて、僕は席についた。
「ここは世界中の情報が集まってくるのさ。そう、君が自殺したこともね。」
「あぁ、そうですか...。」
そう、僕はビルの屋上から飛び降りた。
「ここは...死後の世界?」
「そうだ、飲み込みが早いね。」
僕はゆっくりお茶を飲む。
彼は優しい口調でまた口を開く。
「さて。君には次に生まれる家を選んでもらわなければならない。」
「はぁ...そうですか。」
「君はどんな家に生まれたい?」
できることなら人間が嫌だったけれど、人間以外の選択肢はないらしい。
望みを言えと言われれば、いくらでも言えるくらい過酷だった。
虐待を受け、いじめを受け、精神的にも肉体的にも追い詰められていた。
「じゃあ僕は...幸せになりたい。」
「いい答えだ。それではまた会おう。」
眠くなってまた目を閉じた。
そして目を開けると、そこには新たな世界があった。
自殺をして転生をした少年。
彼が生まれた場所は、何不自由ない家庭だった。
菊磨 温となり、新しい人生を歩み出す。
ある時出会うひとりの少女。
その子のせいで、少年の人生はまた狂っていく。
そしてまた、転生を繰り返す。
「ようこそ。天の図書館へ。おや...また君かい?」
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