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あらすじ
家を飛び出し、”小人”のお家に転がり込んだ”白雪姫”は、思春期特有の滑稽なまでに曖昧で脆い世界の中で、ハッピーエンドを模索し続ける。
題材:白雪姫 作者:京谷悟
ピルケースに入った毒りんごにキスは要らない。 サンプル
扉の開く音につられて顔をあげれば、見慣れた仏頂面と目があった。彼は私の方に一睨みくれた後、何も言わずにリビングを横切って寝室へと歩いて行く。硬質な靴音が小さな後ろ姿を追いかけていた。
「おかえり」と、ソファに寝そべったままで声をかけると、「ああ」と、寝室の奥からその表情に負けないくらいぶっきらぼうな声。随分とそっけない態度だが、いつもの事だから気にしない。何せ彼は“グランピー”なのだから、いつだって不機嫌に決まっているのだ。
グランピーの本名はエドモンド・チャーチルと言った。一二一センチと言う低身長を生かして、役者を生業としている。ハリウッドではこういったユニークな人種は重宝され、彼は小人俳優の中ではかなり有名な方だった。テレビドラマ、映画、CMにナレーション、それらで築き上げた富で購入したこの家は、小人のおうちにしては少々大きすぎると思うけれど。
読んでいた雑誌を中断し、彼の寝室に顔を覗かせる。グランピーは部屋着に着替えるため、着ていた服をその辺に脱ぎ散らかしていた。私は寝室に何も言わず入って、小さな服をひょいひょいと回収していく。大きさは子供用、し
…………続きは本編でお楽しみください
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