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壁を挟んだ奥まった所に、入口がある。ラブホテルの入り口は解りづらい。彼は躊躇せずに、奥へと進んだ。
「ちょっと、待って、ラブホに行くなんて聞いてない。私、高校生だし!」
思わず、後ろ姿に声を掛けた。彼は振り向くと、きょとんとした表情で私を見つめた。
「だって、オレん家、ここだもん」
「え? マジ?」
「マジ。叔母さんが経営してるんだ。まあ、びっくりさせちゃったのは、謝るよ。ごめん。でも、オレも中学生だし、好きでこんな所、来ないよ」
「あ、そう」
私は拍子抜けしていた。ラブホ兼自宅なのね……つぅか、今、中学生って言ってなかった? 年下かよ。背が高いし、妙に落ち着いてるし、同世代か年上だと思っていた。なんか、騙された気分だ。
「早くおいでよ。いつまでもそこに突っ立っていた方が、逆に通行人に怪しまれるよ」
壁の後ろから少年が顔を出してそう告げたので、私は我に返り、辺りに誰もいないかを確かめると、彼の後を追って、小走りで入口に向かった。
ラブホテルという所に始めて足を踏み入れた。自分には無縁な場所だと思っていた。自動扉の先に、それぞれの部屋の写真が貼られた電光掲示板があり、部屋の番号と料金が記されていた。
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