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 好きな部屋のボタンを押して、お客さんが部屋を選ぶ仕組みらしい。空室が明かりを放っている。部屋は三分の一が埋まっていた。  電光掲示板の先に、受付があった。入口は薄暗く、ぼんやりと明かりの灯る受付は、直接顔を向い合せる必要がないように、窓が小さく作られていた。 「叔母さん、ただいま。あのさ、友達連れて来た。今日はオレの部屋に泊めるから」  少年は小さな窓の奥を覗き込むように、首を曲げ、受付の奥にいるだろう彼の叔母に声を掛けた。 「友達連れて来るなんて、初めてじゃないかい? 誰だい?」 「そうだね、初めてだね。女子高生だよ。名前は知らない。今日は家に帰りたくないんだってさ。駅前広場にいたんだ」 「JKだって? 生意気にナンパしてきたんかい? ガキのくせに。ラブホテルだからって、部屋でいかがわしいことをおっぱじめたら、ブッ飛ばすからね。中坊の不純性行為反対! 肝に銘じておきな」  受付の奥から随分、威勢のいい声が聞こえてきた。その乱暴な口調に、私は彼の叔母が怖くなり、姿勢を正した。ここまで来てしまったけれど、やっぱり帰った方がいいのではないかと今更、不安になる。
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