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雑踏の中にいる。目の前にはスクランブル交差点。通りを挟んだ向こう側には、建ち並ぶビル群。ビルの壁には大型ビジョンが、絵画のように掛かっている。それらは、目の前に確認出来るだけでも三つあり、それぞれが大音量を発しながら、邦楽の音楽ランキングやら、CMやらを流している。
うるさい位が丁度いい。私は駅前の広場にいた。裸の子供たちが飛び跳ねている躍動感溢れる銅像を背に、花壇の縁に座って、交差点を行き交う人々を眺めていた。
平日、午後の早い時間には、外国人の観光客らしき人が多い。交差点に向かってカメラのシャッターをひたすら刻む人、自撮りを楽しむ人、団体で記念撮影をしている人々など。近くでおじさんが街灯インタビューを受けている。番組名が載ったナイロンのジャンパーを着たインタビューアーに、マイクを向けられていた。
私はその人達が視界に入らないように、目線を足元に落とした。ヘッドホンを包み込むように、両手を添える。ヘッドホンをしているが、音楽を聴いている訳ではない。これは、人に話し掛けられないためのカモフラージュだ。
午後三時を過ぎると、行き交う人々の中に、制服姿の女の子達が増えて来る。私はようやく安堵した。
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