3人が本棚に入れています
本棚に追加
暫くすると、スマホをいじっていた男の人の、待ち合わせ相手が来たらしく、「私の場所」が空いた。私は再びそこを陣取った。
交差点を挟んで、向こう側の通りを徘徊する少年に、自然と目線がいった。同世代位の男の子だ。ひょろりとした長身の痩せた男の子だった。グレーのスウェットの上下を着ている。ファッションの発信地と呼ばれる街で、不釣り合いな格好だと思い、気になっていた。
パーカーのフードを被っているので、どんな顔をしているかは解らない。左手にゴミ袋を、右手にゴミ拾い用のトングを持っていた。
ボランティアの団体には見えなかった。少年は一人きりだ。実は、昼間にも見かけた。同じ格好で同じことをしていた。一定の時間毎に、徘徊しているようだった。私がここにいることを、誰もが気にしないように、彼がそこにいることも、誰も気に留めない。彼は雑踏の中を行ったり来たりし、ゴミ拾いをしていた。
「良かったら、どうぞ」
突然、目の前にペットボトルのお茶が差し出され、私は驚いて顔を上げた。視線の先に立って、こちらを覗き込んでいたのは、ゴミ拾いの少年だった。
「え? あ、えっと……あ、ありがとうございます」
最初のコメントを投稿しよう!