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私は思わず差し出されたペットボトルを受け取ってしまった。温かいペットボトルは、冷えた手先をじんわりと温める。
「隣いい?」
私が頷くと、少年は隣に腰を下ろした。ゴミ拾いはもう終えたのか、ゴミ袋もトングも持っていなかった。スウェットのズボンのポケットから、自分用のお茶を取り出し、キャップを捻る。
「お姉さん、昼間からずっと、ここにいるよね?」
新手のナンパだったら、どうしようと、警戒していた私は、少年が私の存在に気付いていたことに驚いた。両耳を塞いだヘッドホンを外す。
「気付いていたんですか?」
「気付きますとも、ずっといるんだもの」
そう言って、少年は私に向かって微笑んだ。
「ちなみに、一週間前と、その前は、三週間位前かな? たまにここに座って、ぼぅとしてるよね? 大体、午後の一時くらいから、六時くらいまで。そしたら、諦めたみたいな顔して、駅の改札に向かう。そうだよね?」
「うぅ」
私は答えに詰まって、うめき声を上げる。何でそこまで知っているのだろう? 一体、いつから、彼は私を知っていたのだろう? 急に恥ずかしくなり、私は両手で顔を覆った。
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