4人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「ミスリルの燭台に食器、ティーセット。全部司祭様に無断で質屋に入れてしまい破門か。残念な修道僧だ」
教会から締め出されて呆然と立ち尽くすロミオの後ろから男の声が聞こえた。
「誰ですか?」
そう言ってロミオが振り返ると、鎧を身に纏った兵士がいた。ロミオの問いに対して、その兵士は右手の人差し指を立て、舌を鳴らしながら左右に何回か振った。
「そんなことはどうでも良い。俺について来い。そうすれば命の保証だけはする」
兵士は不敵な笑みを浮かべる。
「そんな、誰だかも分からない人を簡単に信用……」
ロミオが話している途中で兵士はおもむろに右手を開いてロミオの顔の目の前に出した。
「おっと、俺が誰かなんてことより大事なことがあるはずだ。アンタ、明日から住む場所も食べるものもなくなるんだぜ」
確かに、とロミオは思った。教会で修道僧をしているうちは食べ物にはありつけた。しかし、破門になり職もなく、借金だけが100万ゴールドもある身としては、のっぴきならない状況だ。
「ついて来たら飯ぐらいは食わせてやる。さあどうする?ついて来るか?選択肢はイエス、はい、もちろんの3つだ。10秒以内に選べ」
ロミオは頭を抱えた。確かに今の切迫した状況では選択肢はほかに見当たらない。だが、果たしてこの兵士を信用していいものか。
「残り5秒、4、3、2」
「はい」
ロミオはそう言って腹をくくった。生きるには、明日の飯にたどり着くにはおそらくこれしか方法がないのだ。
返事を聞いた兵士はロミオの腕をとり、その腕をぐいぐいと引っ張っていった。
最初のコメントを投稿しよう!