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アルバイトを終えた三春は化粧を落とし、私服に着替えてアパートへ帰った。三人姉弟の三春は二人の姉と一緒に暮らしている。死に物狂いで働いてお金を貯め、四十代半ばで早期リタイアした両親は、今は大陸に渡り放牧民として憧れのテント生活を送っている。
鍵を開けリビングに向かうと、長女の一愛(ひめ)が台所に立ってお玉で鍋をかき回していた。
「ただいま」
三春が言うと、黒髪を襟足でお団子にした一愛が振り返った。今日一愛は休みなのに眉を書き、アイラインを引いて赤いリップを塗っていた。三十一歳になりいつも綺麗な一愛は三春の憧れだが、隙が無いとも密かに思っている。
「お帰り。ご飯は?」
「どうしようかな。今食べたら太っちゃう」
「それならいいのあるよ。韓国で買ってきた痩せるって評判の薬膳スープ」
一愛は国際線のキャビンアテンダントをしていて昨日帰国したところだ。
「何それ。飲みたい!」
「じゃあちょっと待ってて」
用意が出来る前に手を洗おうと三春が洗面所に行くと、風呂上がりの次女、二美花(ふみか)と出くわした。二十七歳にもなって二美花はパンツ一丁で、辛うじて上半身はバスタオルで覆われている。ジムのトレーナーをしている二美花の腹筋は割れていた。
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