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「二美花は静かにしていて」
一愛に言われて、はいはい、と大人しくなった。外で喧嘩する気はないらしい。
「航一さんは三春に昨日会ったばかりだそうですね。それなのに結婚を申し込むなんて、普通じゃないと思いませんか」
「一愛ちゃん……」
「三春は黙ってなさい。私は家族を代表して話をしているの。両親が遠くにいる今、長女としての責任があるわ。どうなんです」
一愛の気迫に三春は口を閉ざした。
確かにそうだ。どうして航一が初対面の自分に突然求婚してきたのか気になっていた。航一が三春を見詰めた。
「それは一目惚れしたからです。三春さんを見て胸の奥がぎゅっとしました」
一気に頬が熱くなった。
「一目惚れ、ですか……」
一愛が顔を赤くして、狼狽えたように答えた。その気持ちがよく解った。
職業柄、口説かれた経験は沢山あるが、こんなにはっきりと言われたのは初めてだ。しかも身内に対して、照れる素振りもないと聞いている方が恥ずかしくなる。
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