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三春は首を振った。
「僕はそう思わないよ。もっともっと相手が好きになる」
腹立たしさと、裏切られたような気持が混ざった複雑な心境だった。
航一はやっぱり軽い人なのだろうか。なら、三春が感じた温かな瞳は何だったのだろう。
「ああ、そっちのタイプか。重そうだね」
微笑みながら航一が言った。
三春の顔がかっと熱くなった。
重い、と今まで付き合ってきた彼氏にも散々言われてきた。その言葉は別れてからもずっと引っ掛かっていて、心についた深い傷が組織液で水っぽく疼くのを感じた。
「こんなに価値観が違うのに、結婚なんてしていいのかな」
航一から目を逸らし俯きながら三春は言った。航一の革靴が黄色に色づいた銀杏の葉を踏みつけた。
「まあそう言わないでよ。俺は三春を選んだんだから」
「本当に僕で良かったの」
「言っただろう、三春に一目ぼれしたんだよ。唇がぽってりしてて、色っぽいなあって思った。それ以外に理由なんてないよ」
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