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仕方ない。これ以上は譲歩しよう。
「三春」
まっすぐな航一の瞳と目が合った。
「よろしくな」
「はい」
頬を熱くして頷いた。足元には朽葉色のもみじが散っている。秋風は少し冷たいが、とても心地よかった。
その日の晩、三春は航一の家族に紹介された。
十畳くらいの畳の間に大きなテーブルを二つ並べ、丸い寿司桶が四つ並ぶ。それを取り囲んで三春を入れて八人が集まる。中央に航一と並んで座った。みな、三春をじろじろ見ている。
大丈夫かなあ、とどきどきした。
航一の家族は突然現れた三春を見て驚いたものの、和やかな雰囲気で迎えてくれた。
「こちら渡辺三春さん。俺の婚約者」
まず話し出したのは航一だった。
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