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「いやぁ……まだしばらく恋愛はいいかな」
それは本心であって、本心ではない。
由実は形の良いアーモンド形の目を細めながら、ある男子の名を口にした。
「やっぱり大日方が忘れられない?」
「そんなことないし!別に、今さらそんな昔の話……」
旭日の必死の否定に、由実は苦笑いを浮かべた。
「中学卒業してからもう7年でしょう?そんなに引きずってきたなんて、一周回って甘酸っぱいわー」
「旭日ちゃんみたいにずっと同じ人を想えるのって、素敵だと思うよ」
由実の弄りに、亜由佳までもが乗っかってきた。
「違うって。恋愛はもう当分いいの」
旭日はさっきと同じような言葉を繰り返す。
だって、後にも先にも大日方以上の人には巡り会えないだろうから――その言葉は、胸の奥底にしまい込んだ。
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