点灯まで5秒前

5/19
前へ
/215ページ
次へ
「いやぁ……まだしばらく恋愛はいいかな」 それは本心であって、本心ではない。 由実は形の良いアーモンド形の目を細めながら、ある男子の名を口にした。 「やっぱり大日方が忘れられない?」 「そんなことないし!別に、今さらそんな昔の話……」 旭日の必死の否定に、由実は苦笑いを浮かべた。 「中学卒業してからもう7年でしょう?そんなに引きずってきたなんて、一周回って甘酸っぱいわー」 「旭日ちゃんみたいにずっと同じ人を想えるのって、素敵だと思うよ」 由実の弄りに、亜由佳までもが乗っかってきた。 「違うって。恋愛はもう当分いいの」 旭日はさっきと同じような言葉を繰り返す。 だって、後にも先にも大日方以上の人には巡り会えないだろうから――その言葉は、胸の奥底にしまい込んだ。 ***
/215ページ

最初のコメントを投稿しよう!

763人が本棚に入れています
本棚に追加