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「そうよ、いまどきいつまでも初物の女なんて流行らないわよ。むしろ来るべき男性とす
る時に気を遣わせる障害にしかならないわ。たぶん」
「でも、いいの? お姉ちゃん。改めて聞くようだけど」
「なにが?」
「好きになった男性で処女を捨てるんじゃなくて、人生で一度きりしかない初めてをアイ
ドル活動のために捨てるなんて」
ありすが返答をする前に、三月が堰を切ったかのように答えた。
「みくちゃん、ありすちゃんもだけど、君たちはいまアイドルとして世間に羽ばたくため
の分け目の天王山にいるんだよ。ここで踏ん張ってアイドルとしての成長を果たせば、君
たちが一大スターになれるのは間違いないんだ。アイドル活動のために君たちが処女を捨
てることは決して悪いことじゃない。むしろアイドルとしての誇りを何よりも優先すると
いうとても誇り高い行為だ。旧約聖書に記されてるこんな話を知ってるかい? 神様はア
ブラハムに、愛する息子イサクを神様の生贄に捧げるように命じた。アブラハムは神様を
心から信じていたから、泣きながらそれをおこなったんだよ。そうして彼は成長したんだ。
何かを信じ続けるということは、何かを捨てることでもあるんだ。高みに登る人間は誰で
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