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「まったくです。おかげで、今年のクリスマスは仕事をもらえず、仕方ないので、ここでアルバイトをしているんです。」
「それにしても、器用に包装するものですね。」
「最初は大変でした。でも、なにごとも一生懸命努力すれば、できるようになるものです。それに、ほら。」
トナカイは左前足を僕の前に差し出す。
「馬と違って、トナカイのヒズメは二つに割れているんです。私たちトナカイは、この二つに割れているヒズメのおかげで雪を掴みながらスムーズに走ることができるのです。」
「へーー、そうなんですね。」
トナカイのヒズメを間近で見るのはもちろん初めてだ。確かにヒズメは真ん中で二つに分かれてそれぞれのヒズメが外側に向いている。
「この二つに分かれたヒズメのおかげで、紙を挟んで折ったり、リボンを挟んでかけたりできるようになったんです。馬じゃなくてよかったって、思いますよ。ははは。」
トナカイは初めて僕に笑顔を向けた。
弱々しいけど、優しい笑顔だった。
「クリスマスに仕事がもられないとなると、私はトナカイとしての存在感を失ってしまうことになります。来年は仕事があると良いのですが。」
トナカイはまた不安そうな表情に戻ってしまった。
「来年は仕事もらえると良いですね。
僕も一緒に祈ってますよ。」
「ありがとうございます。」
トナカイはまた、僕に頭を下げた。
あ、、、
ゴチン。。。
いたたた、。。。
僕はトナカイにお会計をしてもらってその書店を後にした。
外はすっかり暗くなっていた。
近頃、より一層、日が短くなった。
真っ暗な空から細かい雪がひらひらと舞い落ちてくる。
雪が縦横無尽に空中を舞う中、さっき会ったトナカイがサンタクロースを乗せたソリを引いて、嬉しそうに夜空を駆け巡る姿を想像した。
「クリスマスに仕事をもらえないとなると、私はトナカイとしての存在感を失ってしまうんです。」
トナカイの言葉がいつまでも僕の頭の中に残っていた。
僕は後日、トナカイの様子を見にいこうと、何度もその書店に行こうとしたが、どうしてもその書店を見つけることはできなかった。
街はずれをさまよい歩きながら、僕は自分の存在感について考えた。考えても考えても、答えは出てくることはなく、考えれば考えるほど、道に迷ってしまうような気がした。
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