名前の変わる日

５．構築していく新しい世界

尚吾の手伝いもあって、新しい住居への引越しは思いのほか簡単に済んだ。

ベッドと机、パソコンとテレビくらいが置かれた部屋。
最初はワンルームでもいいと思ったが、少し駅から離れた場所で相場より少し得な１DKがあった。

帰宅して、とりあえず部屋の明かりをつける。
明るい我が家に帰るのが当たり前だった生活から少し変化があった。
誰の声もしない部屋・・・孤独を感じながらも少しずつ冷静さを置いておける部屋。

時折母親が携帯に連絡をしてくるが、概ね一人を感じることのできる時間がほとんどになった。

パソコンで相続放棄のことについて調べながら、今後のことを考える。
果たして、このまま冷静さを保ちながら最後までやり遂げることができるだろうか。

人生においてそうそう誰もが経験するわけでもないもの・・・
誰かに答えを聞くこともできず・・ネットの情報が正しいのかも迷う。
それでも確実に答えは出さなくてはならない。

数日、仕事から帰ってはネットの情報を漁り、テキストファイルにメモする日々が続いた。